神様の間引き
柔道から格闘家へ転向した石井慧選手が記者会見で言っていた。
「自分は60億分の1になりたい」
あえて望まなくても、君は地球上の全人口のうちのひとりに間違いないぞ。安心してほしい。
彼は何を考えてるのかよくわからない人で、気味が悪くて好きになれないのだが、そんなことより60億だ。今、地球にはそんなに人がいるのか。
自然界には必ず天敵と言うものが存在していて、ある特定の種族が増えすぎるのを防いでいると昔生物の授業で習った。 私がまだ小学生くらいの頃、紅蘭渓(こうらんけい:字が合ってるか自信ない)のヘビセンターというレジャー施設ではコブラ対マングースの決闘という見世物が売りで、よくコブラとマングースが闘うシーンをテレビコマーシャルで流していた。
一撃必殺の毒を持つコブラなのだが、マングースはその毒に対して耐久性を持つというのだ。つまりマングースはコブラを襲う唯一の動物、天敵らしいのだが、それをショーにするのはどう考えても動物虐待で、恐らく愛護協会のクレームがついたのであろう、ある時期から流れなくなった。ひょっとしたらヘビセンター自体がなくなっているのかもしれない。
では百獣の王と言われるライオンはどうか。
彼らを襲う動物など地球上にはいない。では彼らの数はどのようにして増え過ぎるのを防ぐのかというと、餌となる動物の数だという。
つまりライオンの頭数が増えれば餌となる動物が大量に必要となる。ライオンが増えるとそれに反比例して獲物は減り続け、しまいにはライオンの頭数を養うだけに必要な餌がそろわなくなる。すると必然的に狩りが下手なライオンなどは餓死せざるを得ず、子供も育たず、ライオンの数は自然淘汰されるというのだ。
大変厳しいが最もな理屈である。
そんなことを考えながらライオンやシマウマに生まれなくてよかったよかったと胸をなでおろしている私はヒト科のホモサピエンスだ。
万物の長とか言って、えらそうにしている人間だ。
我々に天敵などいない。
もしも丸裸でサバンナに置き去りにされれば、ライオンに食われるか飢え死にするかのどちらかだろうと思われるひ弱な存在にも関わらず、天敵がいない。
しかし、それでは自然界における摂理にかなっていないので、いろいろ考えてみるに、我々の天敵は病気なのではなかろうか。
神様はなんの気まぐれか、人間を作った。
寒さを防ぐ体毛もなく、2本足で歩くために獲物を捕らえる脚力もなく、身を守るための爪も牙もない、のっぺりとしたひ弱な生き物。
神様の予定ではすぐに絶滅してしまうだろうと思っていたのかもしれないが、火を使い始めてからはあらゆる野生動物から身を守ることを覚え、また道具や火を使って食料を食べやすく、おいしく調理することで爪や牙がないハンディを乗り越えた。しかしこれではバランスが悪いということで、私が子供のころ、ガンは不治の病と言われていた。現在も病気死亡率のトップを占めるのはガンなのだが、それでも発見が早ければ治る病気になってきた。
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